孤児院で育った()レーサーの水沼ア()キは、事故を起こして休養の旅の途中、生形幸男と知り合い、彼の()生家、生形村を訪れる。そこにあった「金輪を回し、止まれば極楽、逆に戻れば地獄」と言()い伝えのある笠卒塔婆に指をふ()れると、金輪は物凄い速度で逆回転をし()て()地鳴りが起こった。足元が崩れ()、そこに地獄が現われた。失神したアキの目に映じたものは、()呪われたアキの出生の秘密と姦通の罪で地獄にのたうつ母の姿だった。こ()の村はアキの()生()まれ故郷。アキは生形竜()造と、弟()雲平の嫁ミホとの間に生まれた()不義の娘()。竜造()とミホは雲平に殺され、アキは竜造の妻シマによって孤児院に送られたのだ。竜造とシマの間には松男と幸男の二人の兄弟がいた。暫くして、失神したアキを見つけて介抱していた幸男の兄松男は彼女を抱いてしまう。アキの出現で平穏を保ってきた生形家に亀裂()が生()じた。亡き妻ミホ()の面影を求()めて執拗に迫る雲平、アキ()の豊満な肉体が忘()れられない松男()。シマはアキがミホの娘と知ると、村人を使って強姦させようとするが、間違って養女の久美が犯されてしまう()。そして腹違いの兄妹と知りつつ愛しあう幸男とアキ。「妹ひとりを地獄に行かせて、俺だけ逃げるわけにはいかない」()アキと幸男は()最も罪深い近親相姦に、最も至()純な愛のかたちを見いだしたのだ。久美()は焼()身自殺をとげ、雲平は()アキの引く三味線の音に誘われるまま崖から転落死し、シマは土牢の中でミイラとな()った竜造の頭を胸に抱き、舌()をかみきって死ぬ。20年前のミホと竜造と同じ崖道を進むアキと幸男。二人を追う松男と村人達。その時、頭上の()岩()が落下して松男達を襲った。山小屋で兄妹は抱きあう。そして山小屋が湖へ落ちていった。湖をどこまで()も沈んでいくと、やがて闇が少しづつ晴れ、三途の川()が広がってきた。阿鼻叫喚の地獄をめぐるアキ。そこにはシマ、久()美、村人達、竜造と雲平、幸男と松男が()いる。ついにアキは獣と化したミホと対面した。「母さん!」アキは叫ぶが母には我子の判別もつかない。母に声をかけ()た報()いに、アキは足元から樹()の幹に変っていった。そしてミ()ホは桜の木になったアキに体当りを()はじめた。ギシッと樹の幹が真二つに折れると玉のような赤子が産声をあげた。柔らかな朝の光()のそそぐなか、その赤子は生を歓喜するように泣()いていた。
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